香川県地域おこし協力隊コーディネーターの吉田です。
「私たちの本気宣言」は香川県内の地域おこし協力隊及び地域おこし協力隊に関わる人たちの本気をお伝えする企画です。
今回は武井さんが活躍中の女木島へ。
東京のアパレルメーカーで働いていた武井さんは、
観光で女木島を訪れた際にこの島に惹かれ、定期的に通い始めて約5年。
2016年3月から協力隊として活動し始めて半年経った、武井さんの本気を伺ってきました!
吉田
半年経ちましたが、今の活動はどんな感じですか?
武井
メインとしては2つあります。
1つ目は、耕作放棄地での綿花栽培。
何かを自給して生きていきたいという部分では、
食べ物も好きだけど、畑のイノシシ問題もあるし、
私は食べ物というよりは、これまで繊維に関わってきたので、
原材料をつくる一番はじめからやってみたいと自然と思いました。
―糸。
安い服はいくらでも売っているけれど、
やっぱり本当にちゃんとしたものを作ろうと思ったら不思議なくらい安い洋服がたくさんある。
東京を離れるときは、こんなに物が溢れているのに、
これ以上、物を作り続けてどうするんだっていう気持ちがあった。
でもそれから何年か考えた結果、完全に作らないっていう選択肢は違うかなって思い始めて。
そしたら、どういうものだったら作っていいのか、作る価値が有るのか、
作ることによって何か伝えることができるんじゃないかっていう気持ちがでてきました。
そんな時、「綿花」が讃岐三白の一つっていうのを知ったのと、
以前女木島でも盛んに栽培されていた話を島の90代のおばあちゃんに聞きました。
また、田畑健(たはた たけし)著の本、『ワタが世界を変える』という1冊の本に出会い、自分と社会の接点をこれだと思い、綿花栽培に決めました。実際に今年初めて畑をやる時に大変参考になりました。
それに、単純に白くてふわふわした綿菓子とかも好きなので(笑)
2つ目は十数年の間、休所中の保育所のことです。
コミュニティセンターのセンター長・池田さんが何年か掛けて構想してきたものがあって、
私が着任したタイミングでいよいよ動き出すというところでした。
吉田
どのように活用するかは決まっているのですか?
武井
はい。地域のコミュニティスペースと、観光や情報発信の拠点、物販等も検討しています。
吉田
「さぬきの輪TIMES―本気の2冊目―」に載っているきびだんごは?
武井
あれは、まだ試作段階ですが、鬼ヶ島にちなんだ本物のきびを使ったきびだんごです。
島の人に石臼を借りて、コミュニティセンターの三島さんと作りました。
↓ 右から、池田センター長、武井さん、三島さん※コミュニティセンターの池田センター長と三島さんの本気インタビュー記事はこちら。
武井
それと、情報発信については思案中です。
実際に観光で来る人が探しているような、
宿泊地や施設の開館時間、船の時間などのハードな情報が欲しいっていう人と、
今すぐには来れないけど瀬戸内に興味を持ってくれるような、
島の日々の暮らしについてなどのソフトな情報の、
両方盛り込めるようなものを作りたいな、と。
芸術祭とそれ以外で情報を分けずに、
お客様目線のニュートラルな立場で常に女木島全体の情報を発信したい。
「協力隊だから」というよりは、女木島のソフトからハードまでの情報を盛り込んだものを作りたいので、長いスパンで考えていきたい。多言語化も必要かな。
吉田
他に、最近の課題などはありますか?
武井
自分が思っていたよりも高齢化が進んでいて、
地域の人々だけでは解決できない課題があります。
例えば、空き家問題や今後の環境維持などです。
島も小さく、島民も少ないですが、
起こっている問題は他の地域と同じです。
これまでの専門外であることが多いですが、
8月のさぬきの輪で訪れた小豆島の取り組みはとても勉強になりました。
吉田
住民の方に受け入れられている印象を受けましたが、何か気をつけていることはありますか?
武井
常に自然体でいること。挨拶をしっかりする。
吉田
武井さんのお話を聞いていると、地域の尊厳を守りつつ、自分の存在やポジションを理解しているというのがすごく重要だと感じました。
武井
それはそうですね。地域が求めていることと、自分がやりたいこと、できるだけ軋轢がない範囲でできることを、と思っています。
環境に関しては、自分の主張を少しずつ言っているけど、一気に変えることはできないから時間をかけて解決していく必要があるかな。
吉田
地域おこし協力隊だから何かやらなきゃ、と思う人が多い中、
どのように地域の人たちと折り合いをつけてやっていこうと考えられるようになったのですか?
武井
正直、地域の人は協力隊とは何か、を理解している人が少ないので、コミュニティセンターに人が一人来たんだな~っていうふうに思っている人が大半だと思う。
私はとりあえずはそれでいいと思ってて。
だから地域の行事などのお手伝いもするし、自分がやりたいこともあわせて少しずつバランスをとってやる。
「私のことわかってほしい!」っていうのはそんなにないかな?
吉田
今後、一番やりたいことは何ですか?
武井
今栽培中の綿花を子供関係に繋げていけたらいいな、っていうのはある。
子供をもっと呼びたい。
女木島には一日楽しめるようなコンテンツが少ないから、バスで洞窟に行って帰ってきて3時間くらいの短時間の滞在になってしまう。
もっと島内で親子が長時間楽しめるようなものができたらいいな。
吉田
3年後、自分はこうなっているだろうな、というイメージはありますか?
武井
何か作ることである程度生計が立てられたら、自分にとって一番心地が良いなと思っている。
吉田
ヒンメリ(↓写真)も作っていましたよね?
武井
今はフィンランドの伝統工芸の本を見てやっている状態です。
秋には綿花の収穫後の畑に麦も蒔くつもり。
来年は自分で育てた麦で、自分がいいなと思うヒンメリが作れたらいいな、と思います。
自分の手を使って何かを作っていきたい。
その他にも構想しているものはあるけど、今はまだ言いません(笑)
吉田
それは次回のお楽しみにとっておきます(笑)
今回はありがとうございました。
↓ ヒンメリ(himmeli)は翌年の豊穣を祈願するフィンランドの冬至祭で祀っている伝統的な装飾品。
武井さんの温かい雰囲気に包まれたインタビューは終始癒やしの時間でした。
そんな武井さんが心をこめて作るものがどんなものになっていくのか、これからがとても楽しみです。
☆武井 美恵子(地域おこし協力隊@女木島)
服飾専門学校卒業後、東京のアパレルメーカーでの生産管理や、オリジナルテキスタイル制作、国内縫製工場の管理を経験した後、自転車で海にも山にも行ける環境に惹かれ女木島へ数年通った後、2016年3月に地域おこし協力隊として高松に移住。高松に住みながら女木島に通い、耕作放棄地を活用した農業と、地域コミュニティ活動のサポート業務を行う。(「さぬきの輪TIMES―本気の2冊目―」より)