香川県地域おこし協力隊の吉田です。
「私達の本気宣言」は香川県内の地域おこし協力隊及び地域おこし協力隊に関わる人たちの本気をお伝えする企画です。
今回は直島町地域おこし協力隊の山岸さんご夫妻を取材しました。
建築やリノベーション、デザイン関連の知識と経験が豊富な山岸正明さん&紗恵さん。
多彩なキャリアを活かし、直島の空き家バンク&移住に関する情報発信サイト「NAOSHIMA COLORS」をプロデュースし、空き家空き地バンクの運営・移住相談・滞在型移住体験施設の運営・PV制作やデザイン制作・写真コンテストの運営等、多岐に渡って活動をしています。
お子さんが生まれたのをきっかけに直島移住を決めた山岸さん夫妻。自らの働きかけで、直島町を協力隊導入へと導きました。そんな山岸さんならではの、移住希望者にとってとてもためになる本気のお話をお伝えします。
吉田
「さぬきの輪TIMES 第1弾」に引き続き、ご協力いただきましてありがとうございます。
改めて、現在お二人がどんな活動をされているのか教えてください。
紗恵
主に「移住促進」に関する活動をしています。
具体的には、移住希望者・定住希望者向けのホームページの運営、空き家バンクの運営、SNSの運営を主軸に、移住促進やまちづくり関連のイベントへの参加、写真コンテスト等の移住促進に関連するイベントの企画・運営、インターンの受け入れなども。
正明
あとはPV(プロモーションビデオ)やポスター、パンフレットのデザイン制作もしています。
紗恵
昨年は空き家バンクのスタートに合わせてWebサイトの「NAOSHIMA COLORS」を企画しました。
今年は町のPVをプロデュースしています。
吉田
そのPVは移住関連ですか?それとも観光関連ですか?
紗恵
移住促進のPVです。
NAOSHIMA COLORS(Webサイト)に掲載したり、県や国などが運営しているWebサイトにも掲載してもらう予定です。
正明
もともとNAOSHIMA COLORSのWebサイトは、そこを見れば移住のためのツールが揃っているようにしよう、というのがありました。
紗恵
移住に欠かせない情報として、町内の求人情報やお仕事紹介の記事もあります。
正明
現在のサイトを①空き家バンク、②直島の仕事について、③お試しのための移住体験、④直島のローカルイベントや暮らしの情報、という4本柱で構成していて、それらをPRするための映像ですね。
紗恵
移住者のインタビューだけではなく、直島でどういう働き方をしているのか、子育て環境はどうか、その辺を織り込んで作っているところです。
正明
新しい暮らしのために最低限必要なことをサポートするという感覚でやっています。
吉田
移住希望者が本当に知りたいリアルな声や暮らしの情報がそこにあるのですね。
紗恵
NAOSHIMA COLORSは一般的な自治体が作るWebサイトとは違う親しみやすい雰囲気で、アウトプットが柔らかくなるように意識しています。
吉田
NAOSHIMA COLORSのウェブサイトは本当におしゃれでカフェみたいなページですよね。
紗恵
ありがとうございます。仕組みは最近の不動産情報のサイトに近いでしょうか。少しずつ物件が増えてきたので、検索もできるようにする予定です。
吉田
お二人の活動を見ていると、得意なことを活かして空き家バンクを運営したり、移住体験住宅を作ったり、とても順調に見えるのですが、実際やってみて大変なことや課題などはありましたか。
正明
課題はいくつかありますが、物件の登録をしてもらうところに初めの壁があると思います。
空き家がいっぱいあるところまでは自分たちの調査でわかりますが、そこから先が色々な意味で課題ですね。
紗恵
都市部では不動産の売買や賃借が金銭のやりとりさえできれば成立
一方で、実家や思い出のある場所を「売る」
それから、空き家バンクの物件への問い合わせや実際住んでもらう事例が増えてきたので、次の課題も見えてきました。
現在は不動産会社がないため、契約や住んでからのケアをする仕組みがありません。
物件を気に入ってもうまく交渉が進まなかったり、住んだ後で補修等の面で問題が出てくることも考えられます。
吉田
島では家賃などの「条件」ではなく「誰が住むか」が重要だと伺ったことがありますが、間に不動産屋さんが入らないからこそ、当事者の判断が重要ですよね。
紗恵
大家さんたちはきちんと挨拶ができるか、相手の話をちゃんと聞いているか、家賃の滞納がないように仕事をきちんと考えているか、などを見ていると思います。
正明
でも、なかなか初対面で互いに判断するのは難しいですよね。
その幅を縮めるために僕らがいます。
物件の状態などについて事前に説明した上で、見学日を調整したり見学時には立ち会いますし、売主さんと買主さんが様々な情報を得た上で説明を聞きながら挨拶をして話をしていくので、そこまでかけ離れたものにならないんですよ。
以前よりも大分スムーズに行っていると思います。
物件も移住者も少しずつ増えているので、いいスタートを切れました。
紗恵
さらに次の段階では、ハザードマップや解体が必要な物件、農地転用なんかへのケアが必要になりますね。
特に解体については、防災や防犯の面もあるので、自治体が国を待たずに早めに動いてくれたらいいと個人的には思います。
正明
僕たちがそういった国の制度を待っていたら過疎化は進む一方だから、その改善策として、自分たちで出来ることや改善できることがあればやっていきたいですね。
島小屋(※)だってそうです。築120年ですから。笑
僕たちが使い始める前は、20年くらい空き家だったそうです。
空き家の有効活用の事例として、現在のスタイルをガスも水道も電気もない状態から考えました。
初期投資は抑えて、だんだんとお客さんがやってくるようになったら、その収益でリノベーションしていくっていうやり方です。
つまり、お金がない人でも、空き家を有効活用できるし、空き家をそのまま放置してしまうのが一番良くないことであって、少しでも前進する方法を考えていけば、空き家は少なからず減っていく。
そういう方法を皆で考えていって、まずは自らが実践していくことが大切ではないでしょうか。
(※山岸夫妻が個人経営している、古民家を再生したブックカフェ&テントステイ型宿泊施設↓)
▲「島小屋 – shimacoya | BOOK CAFE & TENT STAY」
紗恵
空き家を動かすということは、所有者にとってはとてもエネルギーがいることだと思います。
相続人の同意を得たり、場合によってはお金がかかったり、それはそれぞれに状況や立場が違うので、理解をする気持ちでお話を聞くようにしています。
正明
僕らの目線で、なんとかしましょうよ!っていう情熱だけでクリア出来るような問題じゃないんですよね。
若い人たちが頑張ってるから応援するわ!みたいな世界とはちょっと違っていて、それはその世代の目線で話をしていかないと。
お互いの環境を理解することからスタートしないと、話は進んでいかないように感じます。
吉田
NAOSHIMA COLORSを立ち上げてから、何組移住されたのですか。
正明
移住したのは、3組。
あと、結婚するときに実家から出るっていう島内引越もあって、それで新しく土地を購入した方が他に2組。
吉田
3組の移住者がいらっしゃるということは、すでに結果が出始めているのですね。
正明
数字も結果ですが、その結果を地域の人たちがどう見るか、思っているかという事は別の話で、そこを大事にしたいと思います。
僕が良しとしてやったことでも、地域の人たちが何してくれたんだよっていう人が多ければ、それは良い結果とは言えない。
だからその辺りを感じたいです。
山岸さんが来てくれたことによって良くなったよ~って言ってもらえるように、3年間過ごしたいですね。
吉田
今後の目標を教えてください。
正明
やりたいことは、例えばこの島小屋だったらこの「空気が良い感じ」っていうのは、やっぱり維持したいと思っています。
周りの人たちがハッピーになってくれたら良いとか、それくらいですよ。
そんなでっかい野望みたいなものはなくて、自分がまずは楽しむって事が大事かな、と思います。
自分が楽しんだら周りも楽しんでくれるだろうし。
やっぱりそういう楽しい事をやってると周りの人はすごく応援してくれますね。
「協力隊ありきで移住するのではなく、移住する前に、きちんと事前に下調べをして、そこがどんな土地か、自分にどんなスキルがあって、そこで何が出来るか、を把握した上で移住すべき」
とりあえず行ったらなんとかなる。ではなく、移住するとはどういうことか、をしっかり考えてきた山岸さん。
移住先で根を張って生きていくことへの強い意志を感じました。
☆山岸 正明(地域おこし協力隊@直島町)
東京工芸大学工学部建築学科を卒業、大手マンションディベロッパーにて、不動産開発、企画、デザインを担当。
社内ベンチャーにてリノベーション事業の責任者を務める。子どもが生まれた事を機に、直島へ移住。
NAOSHIMA COLORSを運営しつつ、プライベート時間ではブックカフェ&テントステイ「島小屋」を運営。
☆山岸 紗恵(地域おこし協力隊@直島町)
武蔵野美術大学建築学科を卒業。キュレーターのアシスタントとして、パブリックアートの企画、内装デザイン、イベントの企画運営を担当。その後、フリーランスとなり、住居やオフィスデザイン、不動産企画等に携わる。
NAOSHIMA COLORSを運営しつつ、プライベート時間ではブックカフェ&テントステイ「島小屋」を運営。