琴平町と善通寺市で協力隊として活動し、もうすぐ任期満了を迎えるふたりに「地域おこし」について対談いただきました。
いわゆる限界集落ではなく、「農業や商業で、また観光地としても賑わう町」で活動するお二人は情報発信やプロモーションを主な活動としています。
さぬきの輪TIMES12の紙面ではお伝えしきれなかった部分を対談形式でお届けします。記事の最後には、これから地域おこし協力隊になりたい方へのメッセージも載せています。
プロフィール
琴平町地域おこし協力隊
寺岡 伊代 (てらおか いよ)
善通寺市出身。結婚を機に広島県尾道市へ。アグレッシブな自営一家に嫁いだことから、10年間様々な事業を経験。事業譲渡を機に、夫に勧められ地域おこし協力隊へ応募。
SNS情報発信、琴平町公式YouTubeでの発信を行っている。
任期後は、自身が制作した琴平町のポータルサイトの運営を続けていく予定。観光客や地元の人にも役立つ情報を発信している。
「DISCOVER KOTOHIRA」http://34.134.96.21/
善通寺市地域おこし協力隊
日髙 慎一郎 (ひだか しんいちろう)
大阪市出身。10年間大阪の広告会社で働いた後、農家を経験。その後フリーのカメラマン・イラストレーター・動画制作者となる。
写真を使ったシティープロモーションや情報発信を行っている。
任期後もカメラマンとして活動していく。
「善通寺市地域おこし協力隊【公式】」https://www.instagram.com/zcppppppp/
―活動地域について
寺岡 琴平町は小さな町ですが、一大観光地でもあります。いつも楽しそうな観光客で賑わう街は、自分も楽しい気持ちになれるので好きです。想いをもった素敵な人も沢山います。そして、人と人の距離がとても近い。協力隊としては私が7代目で、琴平町は協力隊卒業生ともとても仲がいいです。地域おこし協力隊のことを知って下さる方も多く、歩いていると必ず誰かに声をかけられます。小さな町ですので、協力隊への要望もすぐ耳に入ります。観光業から農業まで様々な仕事をしている人がいるので考え方が様々で、こちらを立てればあちらが立たずという状態になることもあります。
日髙 僕にとっては地域の方の声がすぐに届く環境は羨ましいです。善通寺市は、琴平町より面積が広く人口も多いですが、その分一人一人の意見が直接届きにくいと感じる時もあります。私があまり届く距離にいないというのもありますし、SNSのコメントなどはありますが、自分の活動について地域の方からフィードバックがある環境は、地域のことを意識して活動している人にとっては報われるし、モチベーションに繋がると思います。
―活動で苦労したことはありますか?
寺岡 私は善通寺市出身なのでUターン組なのですが、そのことを地域の方に話すとがっかりされてしまうことがあります。香川県は県外に出ていく割合が少ないし、一度出ても戻ってくる人が多いからです。だけど私は、Uターンは定住しやすいし、1回県外に出て戻ってきた人は瀬戸内の良さが分かっているから、戻ってきたくなるまちになってほしいと思っています。もちろん琴平町の今の他の協力隊員3人のように、県外から来た人の方が“香川県にしかない魅力”を発見することが得意なので、バランス良く来てもらうのが理想ですよね。
日髙 僕は苦労したことというか、ショックだったのは、2年目に突入しても市内の結構大きい小学校の教員の方たちから「善通寺市に協力隊なんていたの?」と言われた時に、「ああ、まだまだ知られていないんだな」と感じたことですね。
―協力隊の活動で喜ばれたこと
日髙 直近では、ふるさと納税の写真をリニューアルしたら人気ランキングが上がったことです。全国規模の「ふるさとチョイス」というサイトの豚肉部門で、伸び悩んでいた人気ランキングが一時期1位にまでなりました。他のサイトでも上々のようです。
豚肉の写真だけじゃなくて、それを使って料理した写真も載せたほうがいいとアドバイスをしました。善通寺市内のお店で調理、盛り付けまでお願いして、その場で撮影をしました。サイトに載せるデザインにもこだわっています。
寺岡 私は、自分が作った職員募集のYouTubeを見て、琴平町の保健師採用の面接を受けにきてくれた人がいたことです。大変だったけど作ってよかったと思いました。保健師は、看護師の資格を持っていないと取れない難関な資格で、町にとって欠かせない仕事の一つです。
↑琴平町公式チャンネルの職員募集のYou Tube動画
町の動画は制約や要望も多いので苦労もありますが、給付金の申請の仕方の動画を作ったときも、「ありがとう」とか「スムーズにできた」とコメントが来て嬉しかったです。
日髙 コメントが来ると嬉しいですよね。僕も給付金の動画を作ったときに、「善通寺市の給付金申請の動画がわかりやすい」とTwitterに載せてくれた方がいました。
―二人の考える地域おこし協力隊とは?
これから協力隊になる人へのメッセージ
寺岡 世代を問わず、地域の人と話すことが大切です。まちの中でも、とにかくいろんな人に声かけましたよー。そしたら本当にいろんな人と繋がる繋がる(笑)。さらに子どもがいたことで、子育て世代とも関わり合えたし、地域活動している人たちにも打ち解けやすかったと思います。まず人のお手伝いをして、自分を知ってもらえたから、今後の活動をスムーズに応援してもらえるのだと思います。
日髙 私はあまり知ってもらうことに重点を置いて活動はしていませんでしたが、善通寺市のボウリング場の壁をウォールアート化した企画では、通っているうちに地域の方に名前を覚えてもらったり、今でも行くと常連さんたちに声をかけてもらえたりします。「地域おこしっぽいな」と思いました。活動を通してなんとなく思ったのが、自分は地域の副キャプテン的立ち位置が好きだということですね。バックアップするというか。
寺岡 私も副キャプテンの方が好きですね。
抽象作家kuromaさんがボウリング場の壁画をウォールアート化した様子
壁画のウォールアート化が終わった後日髙隊員が制作したPR動画
日本一美しいボウリング場
kuroma×MAXBOWL
日髙 着任前にお伝えしたいのは、市町によって協力隊に関する環境の違いが大きいことです。活動費に対する考え方とか。
寺岡 そうですね。ミッションに対する考え方も、琴平町のように「街を地域おこし協力隊みんなでPRしてほしい」とか、「具体的にこの能力のある人に来てほしい」とか。
日髙 職員の異動で方針が変わることもあります。地域の特性や行政の特徴については、これから地域おこし協力隊になる人は知っておいた方がいいと思います。私は応募前にまず電話して職員さんに会いに行きました。
私は自分のためではなく、“地域のためにする”というのが地域おこし協力隊に必要なことだと思っています。結果的に自分のためにもなったりしますが、“地域のために”というのが前提になくてはいけないし、一過性のものではなくて、継続していくものを心がけています。
今まで善通寺市の写真を沢山撮りだめしてきました。そうした写真は今後も善通寺市のために使用していただければと思っています。僕が善通寺市の協力隊になったことで、少しでも市の写真のクオリティが上がって、善通寺市の風景に目を向けてもらえる機会が増えたら「地域おこし」に繋がるのではないかと思います。
寺岡 これから協力隊になるのであれば、フリー型かミッション型かはすごく重要で、何を求めて募集している自治体なのかをしっかり調べた方がいいですね。人と比べることなく、自分のペースで!
琴平町地域おこし協力隊 寺岡隊員
善通寺市地域おこし協力隊 日髙隊員
ご協力ありがとうございました!!
対談及び善通寺市の写真:善通寺市地域おこし協力隊 日髙慎一郎