今回は現在任期3年目の三豊市地域おこし協力隊、竹内奈央さんにインタビューを行いました。東京出身で、カンボジアでのインターン経験や、全国各地を訪れた中で、なぜ三豊市にたどり着いたのか。そして、これまでの活動や今後の展望についてお話を伺いました。
―本日はよろしくお願いします。まず竹内さんのプロフィールで印象的なのは、カンボジアで象使いになったということですよね。
象使いというのはおまけで、実際は栃木県の益子焼の技術を使って、カンボジアの陶器の品質向上のための支援をするプロジェクトのインターンに一年間参加していました。
―協力隊になる前はどのような仕事をされていたのですか?
メディア関係などいくつかの仕事をしていました。
―そのような経歴の中で、地域おこし協力隊になった経緯を教えてください。
47都道府県のうち鹿児島以外の46都道府県に行っているくらい旅行が好きなこともあって、東京出身ですが、地方のまちづくりや観光に興味がありました。その中で地域おこし協力隊という制度を知って、メディア系で働いていた経験から、情報発信業務だったらその経験を活かせるかなと思いました。また、当時精神保健福祉士の資格の勉強をしており、協力隊の募集によっては週4日勤務だったりするので、資格勉強と両立できるかなと考えました。
―日本全国各地を訪れた中で、なぜ三豊市の協力隊に応募したのでしょうか?
まず旅行で香川を訪れた際に、瀬戸内の景色や穏やかな気候にいい印象があり、住みやすそうだなと思っていました。三豊市のことについては四国八十八ケ所霊場のお寺が多いことや粟島の漂流郵便局のことは本で読んだことがあって知っていました。
協力隊の募集を探していた際に、「瀬戸内」、「お寺のある町」ということで条件を絞ったら三豊市の協力隊の募集が見つかったんです。三豊市の募集が週4勤務であったことや、ミッションが「観光」だったことも大きかったです。
―では、実際の活動内容について教えてください。
着任当初はすでに三豊市で実施することが決まっていた観光関連の企画運営をしました。また他の市町村や民間企業の方が離島や三豊市の観光スポットを視察する際の対応、「粟島芸術家村」のアーティストサポートの業務もしていました。あとは地元のお祭りのお手伝いなんかもしていましたね。
2年目は無印良品さんとのイベントである「つながる市」を立ち上げました。これは地元のお店や事業者が月一で無印良品店内に出店するイベントです。
―「つながる市」に出店しているお店は三豊市以外の事業者も多い印象があります。そういった事業者とはどのようにつながったのでしょうか?
1年目のころからエリアを絞らずにいろんなお店に顔を出していました。そういったことが2年目以降に生きてきたかなと思います。
―とはいえ昨年から月一開催を続けていると出店者のネタが尽きてきそうですが。
それが全然尽きないんです。むしろ最近だと事業者側から出店したいと言っていただけることも増えています。あとは出店者同士の紹介もあったりします。
―3年目の活動としてはどのようなものがありますか?
2年目から取り組んできたことではありますが、瀬戸内国際芸術祭夏会期の開催に合わせて三豊市内の島を紹介する、「℃」という観光サイトを、三豊市協力隊OBの古市さんと協力して立ち上げました。これまで瀬戸芸期間中はSNSでの情報発信などはしていたのですが、瀬戸芸が終わった後にも持続可能な発信をし続けられる場所を作ろうということでこのサイトを立ち上げました。
また今年の活動としてお仕事図鑑の制作を行っています。これは香川大学の学生と協力して行っているのですが、三豊市内の事業者を取材して市内でどんな企業があるかを紹介する冊子です。これは求人者向けの冊子ではなくて、子供たち向けの冊子です。三豊市には面白い人たちがたくさんいるのに、それを知らずに進学等で都市部に出て行ってしまうことが多いので、市内の事業者を知ってもらうことで、子供たちに三豊市の魅力を知ってもらって、三豊市に愛着を持ってもらいたいなという思いで作成しています。
あとは現在行っている「つながる市」を、私が退任した後も継続して開催していける仕組みづくりも行っています。
―活動内容をお聞きしていると、「観光」ミッションの枠を超えた内容が多いイメージがあります。
三豊市は父母ヶ浜などの有名な観光地があって、観光交流局がすでにしっかりと発信していることもあって、同じことをしていてもしょうがないなと思いました。そこで市内の人にどのように観光に興味を持ってもらうかとか、どうしたら事業者同士が相乗効果を生み出せるかということに舵を切りました。
―協力隊としての活動の中で良かったことや嬉しかったことはありますか?
「つながる市」の活動が、無印良品さんの中で成功事例として紹介されたことです。成功事例として紹介されたのは三豊市の他は銀座店と台湾の店舗だけだったので、嬉しかったですね。また、「つながる市」に出店した事業者から感謝されたりすることも嬉しいことです。
あとは私が協力隊になってから、三豊市が協力隊や地域活性化起業人などの外部人材の導入に積極的になっていることが嬉しいことですね。自分のおかげとは思わないですけど、もし私が1年目に市の職員や地域の方とのコミュニケーションが円滑に行えていなかったら、そういった動きにはなっていないと思うので。そういう意味で自分の活動によって外部人材の必要性を感じてもらえるきっかけになれたのかなと思います。
(「つながる市」の様子。)
―活動する中で大変だったことはありますか。
業務の面で言うと、観光ミッションなので、自分自身が三豊市についてよく知っていないと仕事が成り立たないので、そこは時間がかかりました。
また三豊市の場合、父母ヶ浜など、すでにある程度観光が盛り上がっていたので、私がここから何ができるんだろうと思うことはありました。
あとは、私は三豊市内の中でエリアを限定した活動を求められたわけではなかったので、多くの方と関われる半面、「協力隊」という名前から何でも協力してくれるだろうと思われて地域の人からいろいろなことを頼まれたりして、専門的な分野に特化した活動が難しかったです。
―活動の中で成長したなと思う部分はありますか?
物事を俯瞰して見られるようになったと思います。協力隊は自分が挑戦したいことをやるのがいいと思っていたのですが、活動する中で「自分がやりたいこと」「自分が得意なこと」「求められていること」の3つがあるなということに気づいたので、活動する上でこの3つを意識していました。どれかに偏りすぎていたら3年間続かなかったかなと思います。
もう一つは長期的なスパンと短期的なスパンの両面で物事を考えられるようになったと思います。着任当初は3年間で何をやろうかという長期的な見方で考えていましたが、日々の活動を一生懸命やることで地域の人との信頼関係ができて、それが長期的な目標に繋がっていくという積み重ねの大事さを学びました。
―移住して感じた三豊市の良いところはどんなところでしょうか?
とにかく人が魅力的なところです。毎日飽きないくらいのいい景色とは出会っているのですが、その景色とか魅力的な場所を話すときに、たいてい人の話がセットで出るくらい面白い人がいて。例えば父母ヶ浜一つとっても、地元の方が観光地として育て上げたというドラマがあるところがいいですね。場所としての魅力で言うと、とてもバランスがいいです。人が多すぎるわけでもなく、逆に少なすぎるわけでもなく、人に紹介できる人がいて。たぶんそれが私にとって心地よかったりするから3年間過ごせているのかなと思います。
景色で言うと夕焼けがとてもきれいです。きれいな夕焼けが見られるというのは本当に土地の条件がそろっているなと思います。高い建物がなかったり、西側が開けていたり。あと荘内半島では東側も開けているので朝日を見ることもできます。この両方を見られるのは強みかなと思います。
―協力隊になる前からある程度香川県や三豊市のことを知った上で移住されたとのことですが、実際に移住してみてイメージが変わったりしたことや新たな発見はありましたか?
食べ物は本当に美味しいものが多いと思います。特に三豊市は農作物のバリエーションが四季を通じてとても多いです。生活する上でありがたい限りですね。
これが特産っていう胸をはって言えるものは少ないかもしれないですけどバランスがいいというか、旬なものが食べ続けられるっていう。そういったことは移住してから知りました。
―退任後に向けた展望はありますか。
精神保健福祉士の資格を活かして病院に就職することを考えています。
―協力隊経験者だと個人で事業を始める方も多いと思いますが、就職しようと考えているのはどういった理由がありますか。
就職しようと思った理由は精神保健福祉士の実務経験を積んで専門性を高めたかったからです。もともと30代はそういう期間にしたいと思っていたので、就職が自然と選択肢になりました。
―正直な話、精神保健福祉士として就職するのであれば香川県以外での就職ということも選択肢になると思います。その中で、香川県で就職しようと思われたのはどういった理由でしょうか?
人とのつながりがあるということだと思います。協力隊の活動の中で出会った方ともそうなのですが、仕事以外で本当に仲のいい方々とご縁ができたというのは特別なことだなって思います。そういった地域の方々とのつながりの中で暮らし続けたいと思ったことが大きな理由です。
―最後に地域おこし協力隊を検討されている方にアドバイスをいただきたいのですが、協力隊を探す上でのポイントと協力隊として活動していく上でのポイントを教えていただけますか?
探す上で言うと、担当者の方としっかりと話した方がいいと思います。募集要項だけを鵜呑みにせず実際に話すのが一番いいと思います。あとは移住したい地域に足を運ぶことも大事だと思います。移住を考えていることを話すと地域の方がいろいろ教えてくれると思うので。
仕事をする上で言うと、1年目にとにかくいろんな地域に足を運んで、実際にコミュニケーションをとることかなと思います。できる限り初年度にたくさんの方と交流しておくことで、2年目以降の活動がよりスムーズに行えるかと思います。
あとは担当者の方と自分がどういう活動をしていきたいかについてしっかりコミュニケーションをとることも大事だと思います。
(「さぬきの輪の集いin三豊市」での竹内隊員。初の2日間開催となるなど、終始竹内隊員の"三豊愛"が感じなれる内容となりました。)
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